なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注14

公開: 2021年4月22日

更新: 2021年5月20日

注14. コンピュータで動作する時計の時間

コンピュータの内部には、その動きを制御する時計がある。この時計の時間は、1980年代まで、コンピュータによってそれぞれが異なる時間を刻んでいた。コンピュータが1台で動作する限り、それで問題はなかった。しかし、コンピュータ同士が通信を行って、情報を処理するようになり、その情報処理が時間に関係するような処理になると、コンピュータ間での時刻の違いが問題になった。

例えば、株の売買をコンピュータで実行する場合、売り手側のコンピュータは、最も高い金額を提示する買い手を選択する。買い手が二人以上いる場合、その買い手同士は、競争相手よりも高く、できるだけ低い価格での入札を試みる。計算が速いコンピュータがこの処理をすると、競争相手が提示した価格を見て、自分が提示する価格を、1秒の百分の1程度以下の時間で決めることもできる。

つまり、常に売買に成功する「後出しじゃんけん」のような行為が可能になるのである。そのため、取引では、常に「締め切り時間を決めて」入札を開始する。その場合、締め切り時間内に相手側に提示された金額で、売買が決まることになる。そのように、コンピュータの時計が精確でなければ、公平な商取引はできない。

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